最近は教育関係に落ちてくる連邦予算がどんどん削られて、その結果, 先生や親が教育資金を工面する図式が出来上がりつつある最近の米国であるが、 我が学区も例外ではなく、 PTO (Parents and Teachers Organization) などがあの手この手の資金繰り、 その中で 数年前からSilent Auction という形式での活動を始めた。 小学校最後の思い出に、とNASAのスペースキャンプに行く修学旅行のようなイベントがあるが、その準備金の足しにと学校関係者、父兄、地元の商店、レストランなどに協力を仰いで商品を供出してもらい、それをせりにかける、という形でのFund Raising.
大きなところでは コロラドVailの別荘滞在1週間、とか 小型飛行機の2時間の体験飛行、などの豪華版から、 カレッジフットボールやアイスホッケーのチケット、 さらにはクラスの皆で作ったお楽しみバスケット、だとか 校長先生との会食!、なんてのも出品される。まさにピンからキリまで。 これを学校の体育館に展示して、値段をつけてもらうわけだ。日本人の奥さんで、家庭に出張してちらし寿司作ります、なんてのもあった われわれ夫婦も何か協力しょうという話になって、 女房は子供向けのヨガ教室。 で、自分は… と考えたが何も思いつかん。 プレッシャかけられて 思わず 「将棋でも教えようか」 といってしまった。
米国国民というのは巨大なアマチュア集団であって、 ちょっとワザを覚えるとすぐにクラスで教えたり、クラフトフェアで自分のものを売り出したりする。 我々もそのあたりがわかってきたので、わりと簡単にコミットしてしまうのだ。
Ann Arborという街はミシガン大学の本拠地であることもあり、チェスなどの知的遊戯は結構さかんだ。 週末にはダウンタウンのカフェで同好の士が集まって囲碁を打っていたりする。
さすがに将棋を指している人はいないが、 チェスのバリアントということで興味を持つ人がいないとも限らない。 で、女房も「いいかもねえ」 と賛同してくれて、そのまま申込書に”Shogi (Japanese Chess) 1 hour introduction”と書いた。 「1時間だとまわり将棋をやって終わりだね。」と息子。 前に息子の友達が家に来て、将棋盤を見て興味を持ったときには最終的に将棋くずしで終わったな、そういえば。
もう少し説明をつけたほうがいいかなあと思っていたが、当方も多忙な身、判らなかったら聞いてくるだろうと、ほおっておいたら、そのうち出展物のリストが届いた。 見るとちゃんと将棋の説明がついている。 主催者がWikipediaか何かで調べてくれたらしい。
実は「売れるといいな」という気持ちと「誰も買いませんように」という気持ちが半々で、オークション当日を迎えたのだが、
会場に行ってみたら、子供達の書いてくれた説明用のポスターの絵がチェスになっていた。 しまった。やっぱりちゃんと説明しておけばよかった。
サイレントオークションなので、買手は一点一点品物を見ながら、気に入ったものがあれば、商品に添付された用紙に自分に割り当てられた登録番号と払いたい金額を書いて行く。 次に見た人が値段を吊り上げてその下に書き足して行く、という仕組みで値段が上がって行く。
女房のほうはすぐに買い手が付いた。 しかも順調に値段が上がって行く。
将棋のほうは、と見ると、誰も買手がついていない。 やったぜ、と気が楽になり、(おい) 校庭に出て子供達が遊んだりウオーターロケットを飛ばしたりするのを眺めていた。
女房が出てきて「思った以上に値段があがっちゃったよ。どうしよう。」 知らなーい。
外で知人達と話をしているうちに締め切り時間となり、 片付けはじめたようなので、会場に戻ってみた。 用紙がまだだしっぱなしだったので、 「すごいなあ、こんなに出してもらうんならちゃんと教えなきゃあなあ」
「うーんプレッシャー」などと話をし、
「将棋はどうなった、」「あそこ、ほら、白紙でしょ。」「なんか書いてあるよ。」「えっ?」
$10ドルで売れてました。
ミシガンのminimum Wage (最低保障賃金)は時給約7ドルなので、まあなんというか。
息子のほうは「僕はアシスタントをやってあげるよ。」といっているが、 飛車と銀を交換して「持ち駒が増えたー」と喜んでるレベルだし。
どうせ売れるんだったら、もう少し値段がつり上がらなかったか、と思ってしまう。 もしかして、ナルトの漫画で将棋の場面のコマをどこかから探してきて、気の聞いたキャッチフレーズでもつけたポスターにしておけば、もっと高めに売れたかもしれない。 こういうことはいつも後で思いつく。 反省